講演会報告：｛五香六実―小金原開墾事業と開墾会社｝林幸太郎学芸員。８０人満席

１１月３０日（土）、当・友の会と共催、恒例の学芸員講演会は、林幸太郎学芸員でした。題して、「小金原開墾事業と開墾会社₋五香六実を拓いた人々②」。２年前に引き続く、松戸市内の東部、五香（ごこう）と六実（むつみ）地域の”開墾物語の続編”になりました。”明治維新の実像に迫る、地方の事例から！”という立場から、林学芸員の若々しいメリハリと新しい映像を見せながらの解説。江戸時代の房総のひとつ、松戸の地域の「中野牧」や近い「佐倉牧」が、倒幕直後の江戸・東京の窮民対策として、開墾事業を実施された３年間ほどの”経過報告”でした。

　◎今回のテーマは、１８６８年/明治維新の頃、①小金原など開墾事業を主導した開墾会社の活動―「開墾会社」が設立された維新当時の東京の実情、窮民化、対策だったこと、商人の財力に依存した開墾事業だったこと。②「香実（こうじつ）会所の日記」からみる五香六実への入植事業報告―現場から東京の本店へ報告された記録。たまたま残された資料３か月分から、入植の実情を読み取ってみた内容の紹介でした。

〇１８６８年（慶応４）９月、江戸城は開城し、徳川家は４００万石から７０万石となり静岡のイチ大名へ。御家人・幕臣などの半分１万３５００人が静岡へ移住。各藩の江戸詰めも帰国。武士相手の町民も大打撃。しかも、維新政府は戊辰戦争を継続中で、”カネがない”！。東京市中にあふれる無籍・無産の人々、函館戦争投降者への、授産事業を兼ねた対策が政府・東京府の課題へ。どうする！

〇１８６９年（明治２）５月、東京府・政府の役所は開墾役所や下総国開墾局などの経過をたどりながら、民間設立の「開墾会社」への関連組織を整えていく。民間組織の「開墾会社」は惣頭取を三井八郎右衛門、頭取を９名、肝煎を１４名他商人たちに出資と事業を任すというプロジェクト。”大商人”を中心に運営開始。”入植者想定数約２万５０００人、３年間衣食住の提供の計画案”もあった（実際には、土地は少なく、入植者は半分以下だった！）。政府は、「開墾会社」には２０万両の貸与。それ以外の不足分は「開墾会社」が負担とされ、窮民への授産事業が東京で計られ、開墾希望者を募る。明治２年９月以降、下総国牧々開墾事業、出資金額に応じた地所の割り当て、窮民の開墾移住志願者へは、１人につきの農地５反と家作５畝（約１５０坪）を割り当てなどで募集へ。１２月には五香へ入植へ。ｰ 講演の前半の一部まで。

　以下、後半、『香実日記』による現場の出来事の紹介、鮮魚街道沿いに宿舎が建設される。物資の調達・日用品の購入は、主に鮮魚街道の先の松戸町内からだったこと。近村からの入植希望者や共有地をめぐる境界争いなど。しかし、入植三冬目で開墾事業は継続困難で廃止、「開墾会社」の解散となる。１５０年前、”松戸で展開された一大プロジェクトの顛末”は、なぜ、失敗したのか？が今回の山場へ。その後の人々のお話は？、”次回へ続く”ことに！（紹介・松尾）